※記事は随時加筆修正中
卵円孔開存と心房中隔欠損症の違い・・・
これ、疑問に思っている人はかなりいると思うのですが、
卵円孔開存と心房中隔欠損症の違いを分かりやすく説明しているページを
見つけることが出来ません。
これほどインターネット上の情報が増えているというのに。
・卵円孔が閉鎖するのはいつなのか?
・卵円孔開存が認められる時期は正常範囲としてはいつまでなのか?
・出生直後にエコー上、心房間交通を認めるが、
これが卵円孔開存ではなく、心房中隔欠損症によるものと
判断するのはいつなのか?
・出生直後から心房中隔欠損症と診断できる例もあるのか?
・卵円孔開存と心房中隔欠損症を明瞭に理解できる図はないのか?
循環器専門医なら勿論理解している事項なのでしょうが、
心臓を専門としない自分のような小児科医には、
一般の方に「詳しく説明してもらえる?」
と聞かれても正確には回答できない内容だと思います。
※もっとも、一般の方がそんな質問はしないかもしれませんが・・・
私自身、実際の診療で困る場面が無いので、
正確な知識を持てて来ませんでしたが、
ふとこの両者の違いを調べていると、
以下のようなページが見つかり、
尚の事、気になるようなりました。
静岡県立こども病院心臓血管外科のセカンドオピニオン外来
での相談事例「心房中隔欠損症」です。
上記リンク先のページの相談内容を要約すると、
・出生時から心雑音があった
・心臓専門医に診てもらっていた
・卵円孔開存と診断されていた
・軽症だから手術は必要ないと言われていた
・半年ごとにフォローしていた
・6年後、穴は塞がるどころか大きくなった
・診断名も心房中隔欠損症に変わった
このような流れがあり、
医師の対応に不信が募りセカンドオピニオン外来受診を決意した、
というものです。
私が気になるのは、心臓専門医にフォローされていたにも関わらず、
診断名が6年も経ってから卵円孔開存から心房中隔欠損症になっている点。
心臓専門医であっても卵円孔開存と心房中隔欠損症の鑑別が
できていなかった、ということなのでしょうか?
私以外にも、何となく知っているようで深くは知らない、
知らなくても特別問題無いから疑問には思っていたが放っておいている、
という人は確実にいると思うのですよね。
そこで、色々と情報を集め、
理解しやすいページの作成を試みました。
心房中隔の発生を理解するうえで分かりやすい図を見つけました
卵円孔開存と心房中隔欠損症の違いを理解するには、
まずは心房中隔の発生を理解することが大切であると思いますので、
それを分かりやすく解説している図が無いか調べました。
そして・・・
心房中隔の発生を理解するうえで分かりすい図を見つけることが出来ました。
2018年10月現在、「心房中隔 発生」で検索すると1位に表示される
こちらのpdfページです。
心房中隔の発生過程には、
・一次中隔
・二次中隔
・一次孔
・二次孔
・卵円孔
・卵円孔弁
・卵円窩
など、紛らわしい言葉が出てきて、
具体的にイメージするのが困難でした。
上記ページから、心房中隔の発生を図示したものを、
分かりやすく拡大して抜粋します。

胎生30日頃になると、心房内にくびれが生じ、隔壁が形成されてきます。
心内膜床に向かって発達し、これを一次中隔と言います。
一次中隔で覆われていないスペースが一次孔です。
左右心房間の血流は一次孔で交通するようになります。

胎生33日。
一次中隔発達中、下心内膜床も増生して、いずれ一次中隔が
一次孔を完全に閉鎖するようになりますが、
この図はその途中ですね。
一次孔の閉鎖が完了する直前に、
遺伝的にプログラムされた細胞死
(programde cell death)により、
一次中隔の上方にいくつかの孔が出現して癒合し、
二次孔を形成します。

胎生37日。
一次中隔が一次孔を完全に塞ぎ、一次孔が閉鎖しています。
一次孔閉鎖の直前にできた二次孔により、
心房間の血流が交通します。
また、一次中隔の右側、後上方から別の鎌状の稜が発達し、
下方に向かって伸展し、二次中隔を形成します。
二次中隔の凹状の下部自由縁は、二次孔を覆うように重なるところまで
伸長し、その下端の辺縁で卵円窩を形成します。

左静脈洞弁の一部は伸展した二次中隔と癒合し、
心房中隔の一部となります。
一次中隔の上部は次第に消失し、
心内膜床組織由来の中隔に連なり残存した部分は、
舌状の卵円孔弁になります。
左右心房間を交通する血流は、
卵円窩と卵円孔弁の間の斜めの裂隙(卵円孔)
を通り、右房から左房に流れます。

卵円孔開存についての検索情報で、以下の情報があります。
III-P-10
小児期における卵円孔開存の経時的観察
自治医科大学小児科
齋藤真理,市橋 光,保科 優,白石裕比湖,桃井真里子
【目的】近年,若年者脳梗塞や塞栓源不明の脳梗塞の原因として,卵円孔開存による奇異性脳塞栓の重要性が指摘されている.あらかじめ卵円孔開存が診断されていれば,生活習慣に気をつけるなどの予防処置を実施できる可能性もある.卵円孔は本来,自然閉鎖の傾向が強く,小児循環器科医が注意して経過観察することは少ない.そこで,卵円孔の自然閉鎖の時期および頻度を確認するため,後方視的にその経時変化を検討した.【対象】2003年 1 月 1 日~2004年12月31日に出生し,心エコーで卵円孔開存と診断され,経過観察された正期産の乳幼児76例.【方法】外来カルテおよび心エコー検査所見を後方視的に検討した.検討項目は,診断時月齢,診断時卵円孔径,動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併と卵円孔の自然閉鎖との関連とした.【結果】(1)診断時,生後 4 カ月以内で,卵円孔径が 2mm以下の例は全例が自然閉鎖した.動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併は,卵円孔の自然閉鎖時期と関連がなかった.(2)生後15カ月以内に,卵円孔開存の 8 割は自然閉鎖した.診断時月齢,診断時卵円孔径,動脈管開存や末梢性肺動脈狭窄の合併と自然閉鎖の時期は関連がなかった.【結論】診断時に生後 4 カ月以内で卵円孔径が 2mm以下の例は,全例自然閉鎖するため,経過観察の心臓超音波検査は不要である.それ以外の卵円孔開存は,生後15カ月時に再評価をすると,8 割が自然閉鎖している可能性がある.生後15カ月を超えて残存する卵円孔開存は,その後も開存する可能性があり,就学時の検査などが考慮される.