医局を辞めて、一般病院で勤務医として働きだしたのが2009年。
その翌年、2010年に私は勤務医でありながら法人を設立しました。
将来的な節税を目的にしたものでしたが、
当時はFXで利益が出ていたこともあり、
そちらの利益を上手く節税する為にも法人設立が必要でした。
2012年以降、現在の勤務先とコンサルティング契約を結び、
年間600万円の節税効果を生んでいます。
これは劇的な変化です。
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2009年当時のFXの利益は雑所得扱いだった
2009年はFXのトレードが好調で、利益額として1000万円近い利益が出ました。
ただ、当時は個人口座で取引しており、現在のような申告分離課税ではなく、
本業の所得に上乗せされる雑所得扱いでした。
※現在の税制に変更になったのは2012年からで、
以下のように変更になりました。
*申告分離課税で税率は一律20%
*市場デリバティブ取引と損益通算可能
*3年間損失の繰越控除が可能
自分は利益を出したタイミングが悪かったのですね・・・
医師は所得が高いですから、そこに更に上乗せされた1000万円の所得、
これに対しては所得税と住民税できっちり半分持っていかれました。
納税は国民の義務ですから、やむをえません。
利益が出てからでは対策できる節税策はほとんどありません。
確定申告の際に、追加納税で500万円も収める・・・
本当に税制の恐ろしさを知りましたし、
「人が苦労して稼いだお金を・・・」
という怒りとやるせなさが同居した複雑な感情を抱いたのを記憶しています。
しかも、前年は損失だったのです。
当時の税制では、前年の損失は繰り越せませんでした。
3年間繰越控除が可能な現在の税制ならば、いくらかは納税額も減っていましたが、
そんな事を今更言ってもどうしようもありません。
2012年に税制が変更になることなど、当時の私にはわかり得ないことでしたし、
また翌年も利益が出ることになれば、再び多額の追加納税が発生する!
それに対して何か対策はできないのか!?
と考えて講じたのが法人設立でした。
法人を設立し、法人でFXトレーディングを行うのです。
法人化してFXトレーディングを行うメリット
法人でFXトレーディングを行うことは、いくつかの重要なメリットがあります。
損益通算が可能!法人化後の予想外の不振をカバー
個人的にはこの損益通算が可能であることは非常に助けられました。
実は法人化後、FXトレーディングが不調となり、2年ほど連続で損失を出してしまいました。
法人設立が2010年、その後勤務先の病院とコンサル契約を結び、
法人に安定的な売り上げが発生したのが2012年なのですが、
2010年、2011年のFXトレーディングの損失は、
2012年から発生しだしたコンサルによる売り上げと損益通算可能であったため、
その他諸々の経費を含めると赤字となり税金が発生しませんでした。
※後述しますが、法人でのFXは損失繰越控除が9年間可能です。
勿論、FXトレーディングでも利益を上げることが基本ではありますが、
毎年安定的に利益を上げることは容易なことではないですし、
仮に個人で取引していた場合は、そもそも損益通算することはできません。
自分は法人を設立したことで、年間600万円の収入を、
医師としての給与から分離して法人の売り上げとすることができたので、
個人としての所得税は下がり、法人としても税金が発生しない
(地方税均等割りは別です)
という状況を作り出せたわけです。
損失繰越控除が9年間可能!
これが実は非常に大きい。
自分がFXで利益を出した2009年当時は、
相対取引個人口座での損失繰越は認められていませんでした。
が故に、多額の税金を支払う羽目になりました。
最初から法人を設立して法人でトレードしていれば、
もう少し税額を抑えることが出来ました。
そもそも、FXトレーディングは利益を出す為に行いますから、
損失が連続で何年も、という状態は好ましくはありませんが、
実際にFXで利益を出し続けることも実は非常に難しい。
手法そのものよりもトレードする人間のメンタル管理、
そして相場状況にも左右されますから。
利益を出すことに焦らず、じっくりと好機を待ち、
勝ちやすい時にしっかりと利益を出す、
という姿勢が大切です。
ですので、どうしても単年では利益が出ない年もあるでしょうが、
損失を繰り越すことで利益が出た年の税金を圧縮できます。
私自身は、この損失繰越控除が可能な点が非常に大きいと感じていますし、
実際に損失繰越控除のおかげで節税できています。
個人口座より高いレバレッジを掛けられる
2017年現在、個人口座でのレバレッジは25倍程度に制限されています。
法人口座でのレバレッジはこれより制限が緩く、100倍程度でトレードできる
国内証券会社が多いようです。
個人口座に比べるとかなり高いレバレッジを掛けられます。
※ただし、このハイレバレッジも規制される方向性のようで、
以前は200倍、400倍、とハイレバレッジを掛けられた証券会社が
ありました。
ただ、実際のトレーディングにおいては、ここまでのレバレッジは
必要ないですね。
個人口座でのレバレッジ、10倍、20倍程度があれば十分です。
レバレッジを掛けるということはその分リスクを大きくする、
ということですから、安定したメンタルでトレードするには
過剰なレバレッジは寧ろ有害ですから。
しかし、高等なスキルを持っている方でしたら、
ハイレバレッジを掛けられるのは大きなメリットになります。
短期間ですが、月利100%越えの数字を出せたのは、
法人口座ならではレバレッジがあればこそでした。
法人にすれば節税できる範囲が拡がる!
これは特段FXトレーディングに限った話ではありませんが、
法人化することで経費計上できる範囲が拡がります。
自宅を事務所とする場合、家賃の一部は経費計上可能ですし、
光熱費も使用割合に応じて経費計上可能です。
FXトレーディングに必要な通信費やパソコン、モニター、タブレットは勿論、
スマホでトレードすることも多くなった現在では、
携帯電話料金も合理的に経費計上可能です。
会社設立時に定款を作成し、会社目的を作成しますが、
その目的に将来行う予定の事業も含めて記載しておけば、
その事業に関連する経費も計上可能です。
自分の場合は病院に対するコンサルティング業務。
自分が行う業務に関連する知見を得るために学会参加した場合は、
その旅費を経費にできます。書籍も同様。
保険を活用した節税も可能ですね。
常勤病院と医療業務コンサルティング業務を結び年間600万円の節税効果
2012年に常勤先の病院と、
「医療業務コンサルティング業務契約」
を結ぶことに成功しました。
ポイントは、
「医療行為」と「医療行為以外の仕事」
を区別して評価してもらうこと
です。
そして、
「医療行為以外の仕事」
の部分を
「医療業務コンサルティング」
として法人と病院とで契約するわけです。
自分の場合、仕事の内容的には、患者に対する医療行為以外にも、
スタッフに対しての講義、講習会、資料作成、外来の立ち上げ、売上管理、
などの業務がかなりの部分を占めるため、この部分を
「法人としての業務」として認めてもらいやすい背景がありました。
ただし、これもすぐに勤務先に認めてもらったわけではありません。
2010年の法人設立当初から、こうした契約を結ぶことを前提に、
会社目的も作成していましたし、病院側とも交渉していました。
しかしながら、勤務開始間もない時期には、病院側からはやんわりと
断られ、契約には至りませんでした。
やはり、勤務先の理解が得られないとこのスキームは成り立ちません。
その後は、さらにこのスキームに対する知識をつけ、
また仕事の面でもしっかりと実績を積み重ねていきました。
なかなか数字として見える部分が難しい領域でしたが、
その中で外来部門を新たに立ち上げ大きく売り上げを伸ばしたことで、
目に見える結果を病院側に提示、
病院側の自分に対する評価が上げることができました。
病院側の行政書士などとも細部を詰め、
何度も話し合いを重ねた結果地道、
2012年になり「医療業務コンサルティング契約」を結ぶことができました。
これにより年俸1800万円のうち、
1200万円を医師給与、
600万円を法人の収入として支払ってもらうことが可能になりました。
法人部分での収入については、上述のように経費計上できる範囲が拡がるため、
税金がほとんど発生しない状態になります。
勤務医の法人設立は病院側の業績向上にも効果的
勤務医の法人設立について、節税面のメリットがあることを書いてきましたが、
病院側にも大きなメリットがあります。
「医療行為以外の仕事」を評価する、ということは、
例えばスタッフ教育や講演、院内ガイドライン作成などの作業を、
法人側がしっかりと行い実績を出していく必要があります。
現実的にはこうした患者に対する医療行為以外の部分の仕事に
重点を当てることで、病院全体の業績も向上していきます。
病院側にも大きなメリットとなるのです。
私自身はこのスキームは極めて合理的であると思います。
双方にとって大きなメリットがある。
単純に勤務医として勤務するだけの場合よりも、
仕事に対しての責任は大きくはなりますが、
それでも通常ある程度の経験を積んできたドクターであれば、
院内での立場は自然に上昇していき、こうした仕事の割合が
増えてきますから、その部分の評価を「法人」に置き換えて、
明確化してもらっている、と考えれば、
「雑務」として捉えがちだった仕事に対しても、
モチベーションが上がるのではないでしょうか?
まとめ
1.法人化してFXトレーディングをするメリットは大きい
2.勤務医が法人を設立して節税が可能
3.自分の場合は年間600万円ほどの節税が可能に
4.法人設立は病院側にもメリットあり