この記事を書いているのは2019年2月1日ですが、
今、インフルエンザが非常に流行しています。
予防については毎年警鐘はされてはいますが、
一般の方にとって、インフルエンザワクチンというのは、
「効果が乏しい」というイメージがあるのでは
ないでしょうか?
確かにインフルエンザワクチンについては、
シーズンごとにその効果が大きく変化するのは
事実ですから、「ワクチンは効かない」と考えて
接種率が下がるのは自然の流れだとも思います。
しかし、やはりそれでもワクチンには効果も意味もあるのです。
2018年5月17日に掲載された論文を一つ紹介します。
Vaccine effectiveness against laboratory-confirmed influenza hospitalizations among young children during the 2010-11 to 2013-14 influenza seasons in Ontario, Canada.

論文抄録
インフルエンザワクチンの効果の大きさ、特に幼児の重大なアウトカムを防ぐことは、
未だはっきりしていない。
そこで、生後6〜59ヶ月の小児における、検査で確認されたインフルエンザによる入院に関し、
ワクチンの有効性(vaccine effectiveness;VE)を推定した。
2010-11年から2013-14年のインフルエンザシーズンに、
カナダのオンタリオ州で入院した小児に診断陰性例デザインを適応し検討した。
ワクチン接種状況(完全vs不完全)、年齢、インフルエンザシーズンによりVE推定値を推定するための、
年齢・シーズン・シーズン内の時期により調整したロジスティック回帰モデルを使用した。
インフルエンザワクチン接種歴のある場合のVEも評価した。
我々は、4シーズンにわたる、
12.8%はインフルエンザ陽性だった9982人の入院患者からのデータサンプルを検討した。
ワクチン接種状況、年齢群、インフルエンザの診断時期別にVEの変動を確認した。
ワクチンの有効性(VE)は、完全なワクチン接種群では60%(95%CI 44%-72%)、
不完全ワクチン接種では39%(95%CI 17%-56%)だった。
完全なワクチン接種群のVEは、生後24〜59ヵ月の小児では67%(95%CI 48%〜79%)、
生後6〜23ヵ月の小児では48%(95%CI 12%〜69%)だった。
さらに、完全なワクチン接種群のVEは、
2010〜11年シーズンで77%(95%CI 47%〜90%)、
2011〜12年シーズンで59%(95%CI 13%〜81%)、
2012〜13年シーズンで33%(95%CI -18%~62%)、
2013〜14年シーズンで72%(95%CI 42%〜86%)であった。
VEは、2012〜13年のシーズンを除き、現シーズンと前シーズン両方に接種した群と、
現シーズンのみ接種された群とに有意差はなかった。
インフルエンザワクチン接種は、多くのシーズンで、
検査で確認されたインフルエンザによる小児の入院を予防するのに有効である。
シーズン毎に効果の差はあるものの、インフルエンザワクチンはやはり効果あり
個体レベルでは効果を実感できにくいワクチンですが、
集団レベルでの効果は実証されています。
インフルエンザの流行の背景には、
ワクチン接種率の問題もあると考えています。
確かにシーズン毎での効果には大きく差があるのは事実。
そして、「ワクチンは効かない」と考える人が出てくるのも
事実でしょう。
しかし、だからといってワクチンの接種率が下がってしまっては、
流行を手助けしてしまうことになる。
乳幼児の中には重症化して脳炎・脳症を発症し、
後遺障害を残してしまう方もいる。
ワクチンは自分の為だけでなく、
周りの人にうつさないためにも重要です。