抗てんかん薬はスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症のリスクが高い

ケアネットの記事からの学び。
ケアネットは毎日チェックする医療サイトの一つですが、
最近実は院内でスティーブンス・ジョンソン症候群の既往の
ある妊婦がおり、今回の記事が目に止まりました。

スティーブンス・ジョンソン症候群は、
平成20年度の厚生労働省研究班の調査では、
人口100万人あたりの年間発症者数は3.1人、
男女比が1:1.14で性差は無く、
死亡率が3%だそうです。

稀な疾患ではありますが、
皮膚症状も激烈な上に死亡率も無視できず、
適切な早期診断と早期治療が必要な疾患です。

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ケアネットの記事

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)は、
まれで潜在的に致死的な皮膚の有害事象であるが、
特定の薬剤によって最も一般的に引き起こされる。

このSJSやTENとの関連が認められる薬剤の1つとして、
抗てんかん薬(AED)が挙げられる。

米国・ロードアイランド大学のEric P. Borrelli氏らは、
米国におけるAED群および各AEDに関連するSJSやTENのリスクを定量化するため、検討を行った。
Epilepsia誌2018年12月号の報告。

米国FDA有害事象報告システム(FAERS)を用いて、
2014年7月~2017年12月のデータより分析を行った。

各AEDにおけるSJSやTENの発生率は、
すべての非AED群と比較し、算出した。

報告オッズ比(ROR)、比例報告比(PRR)、95%信頼区間(CI)は、
OpenEpiを用いて算出した。

主な結果は以下のとおり。

AED群におけるSJSやTENの報告は198件であり、
いずれの非AED群と比較しても多かった

・AED群は、すべての非AED群と比較し、
RORが8.7(95%CI:7.5~10.2)、PRRが8.7(95%CI:7.5~10.2)であった。

・各AEDのリスク推定値は以下の順であった。

●ゾニサミド(ROR:70.2[95%CI:33.1~148.7]、PRR:68.7[95%CI:32.9~143.5])
●ルフィナミド(ROR:60.0[95%CI:8.3~433.5]、PRR:58.9[95%CI:8.4~411.5])
●クロラゼプ酸(ROR:56.0[95%CI:7.8~404.1]、PRR:55.1[95%CI:7.8~385.0])
●ラモトリギン(ROR:53.0[95%CI:43.2~64.9]、PRR:52.2[95%CI:42.7~63.7])
●フェニトイン(ROR:26.3[95%CI:15.5~44.7]、PRR:26.1[95%CI:15.4~44.2])
●カルバマゼピン(ROR:24.5[95%CI:16.0~37.5]、PRR:24.3[95%CI:16.0~37.1])

著者らは
AED群は、非AED群と比較し、SJSやTENのリスクが9倍高く
リスク推定値が20超のAEDが6剤あった。
SJSやTENの兆候や症状の早期発見に関する教育とともに、
医師と患者の双方がこのリスク
(とくにAED間でのリスクの違い)に対する認識を高めることで、
これら有害事象の数や重症度の軽減につながるであろう」
としている。

抗てんかん薬によるスティーブンス・ジョンソン症候群発症リスクがこれほど高いとは

最近、合併症妊婦の受け入れが、
当院でも増えています。

病院全体で分娩数増加を目指していますし、
それは個人病院の経営においては当然だとは思いますが、
それに伴って、合併症妊婦の数も増えています。

精神疾患の診断を受けている妊婦も多く、
パニック障害、双極性障害、などは頻繁に目にしますし、
てんかん合併の妊婦さんも、
年間数例カンファレンスに上がります。

つい先日も、
バルプロ酸内服中の妊婦さんの話題が出ました。

妊婦のバルプロ酸内服は、
児の神経管閉鎖障害などの先天奇形のリスク上昇、
出生後の発達障害のリスクも上昇します。

上記記事にはバルプロ酸の名前は出てきませんが、
バルプロ酸でのスティーブンス・ジョンソン症候群報告例も
当然ながら存在ます。

抗てんかん薬については、
少なからず知識を持っておく必要があります。

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