先天性白内障と先天性角膜混濁の鑑別と予後の差

先日経験した症例。
在胎37週6日、出生体重2400gとLFDぎみのベビー。

右眼が白濁している。

年間1500人以上のベビーが生まれる。
近年は更に増えた。

これだけの数が生まれれば、
いくら胎児スクリーニングがしっかりしていたとしても、
スクリーニングでは見つけられない所見を持った子が、
数多く生まれてくる。

今回の症例もその一人だし、
少し前には牛眼のベビーもいた。

さて、眼が白濁しているベビーについて、
考えなければならないことがある。

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先天性白内障と先天性角膜混濁の鑑別

ここで鑑別しなければならないのが、
白濁しているのが角膜なのか、水晶体なのか、
という点だろう。

角膜であれば、先天性角膜混濁、
という診断になるだろうし、
水晶体であれば、先天性白内障、
という診断になる。


水晶体が白濁している場合、
解剖学的に虹彩には所見がないわけで、
白濁は綺麗な円形の外観として観察されるだろう。
(これは白濁している範囲によるだろうが。
少なくとも虹彩は視認できるはずである。)

今回の症例はそうでは無かった。
はっきりと開眼することがほとんどないので、
しっかりとした観察が出来たわけではないが、
スタッフに取ってもらった写真から判断すると、
虹彩にも多い被さるように、つまり角膜自体が
混濁しているような印象だった。

先天性白内障と先天性角膜混濁では治療も予後も異なる

まず、先天性白内障の治療から。
国立成育医療センターのホームページから抜粋する。

先天白内障の形態と混濁の程度、合併症の有無を診断し、
治療適応と判断されれば早急に全身麻酔下検査・手術を行います。

先天白内障の乳児に対する手術は、
角膜輪部から器械を挿入して混濁した水晶体と前部硝子体を切除する方法です。

小眼球などの合併症がある場合には、緑内障などの重篤な術後合併症を防ぐため、
通常より細い器械(25ゲージ)で侵襲の少ない手術を実施しています。

1~2歳以降に進行した発達白内障に対する手術は、
十分な術前検査を行って合併症のリスクがなければ、
ご家族とご相談のうえ眼内レンズ挿入術を行っています。

しかし目の成長によって挿入したレンズの度数が合わなくなること、
合併症や再手術の頻度が高いこと、
長期的な安全性が確立していないなどの問題が残っています。

術後には必ず定期的な検査が必要です。

視力を発達させるためには
眼鏡やコンタクトレンズを装着して近くにピントを合わせること、
片眼性や左右差がある両眼性の場合には、
アイパッチを使って良い方の目を遮閉して
悪い方の目を使わせる訓練が必要となります。

医師と視能訓練士が協力して、
術後のお子さんの眼鏡やコンタクトレンズの処方と調整、
着脱練習を随時行っています。

そして0歳代から乳幼児用視力検査を実施して、
視力がどのぐらい発達しているか調べて弱視訓練のスケジュールを立て、
ご家庭で取り組んでいただきます。
良い視力を獲得するためには、

視覚刺激に対する感受性の高い0~2歳の弱視治療が最も肝心です。
また視力が順調に伸びて年長になっても、
後発白内障、緑内障、網膜剥離、斜視などの合併症が出ていないかどうか、
長期にわたって経過をみていくことが大切です。

簡単にまとめると、
まず手術という選択肢があり、
長期的なフォローが必要ではあるが、
視力回復の見込みはある
ということ。

一方、先天性角膜混濁の場合の治療はどうか?

「先天性角膜混濁」で検索すると、
難病情報センターのページがトップに来ているが、
これは平成21年のもののようだ。

情報が古いが、
治療法としては、

角膜移植による角膜の透明化を図り、弱視訓練などの治療が行われる。
ただし、小児の角膜移植は技術的に難しく、
本邦での施行症例数はあまり多くないのが現状である。

と記載されている。

角膜移植の日本における現状は、
平成21年当時と変わっていないと考えられ、
先天性角膜混濁の場合には、
治療手段が現実的なものが存在しない
ということになる。

※角膜混濁も軽度のものであれば、
点眼治療やレーザー治療が奏功するケースもあるようだが、
重症の場合には移植ということになるそうだ。

今回の症例は、先天性であり、
しかも範囲も広いので、
重症に分類されることが予想される。

現実的な治療手段は角膜移植となり、
それを日本で、しかも小児に行うのは、、、

なお、先天性角膜混濁に対する角膜移植について文献報告については、
以下のようなものがある。

先天性角膜混濁に対する全層角膜移植を施行した
0-7歳の患児50例の60眼を6-82カ月間追跡し
(平均追跡期間18.9±19.3カ月)、
移植成功後の視力および予後因子を検討した。

最終追跡時、60眼のうち43眼(71.7%)が
ambulatory vision(視力20/960以上)を達成し、
14眼(23.3%)が視力20/260以上を保持していた。

片眼性混濁眼と比較して
両眼性混濁眼のambulatory vision達成率が有意に高かった
(58.8% vs. 88.5%、P=0.012)。

片眼性強膜化角膜が視力転帰不良と関連し、
ambulatory vision達成率は12.5%だった。

【原文】
Lin Q et al. Visual Outcomes and Prognostic Factors
of Successful Penetrating Keratoplasty
in 0- to 7-Year-Old Children With Congenital Corneal Opacities.
Cornea. 2018 Oct;37(10):1237-1242. doi: 10.1097/ICO.0000000000001689.

片眼性の方が、
歩行可能な視力の達成率が低い

今回の症例は大学病院の眼科へ紹介し、
診断を付けてもらうことが最初の一歩。
まずはそこからだ。

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