新生児期、乳児期の赤ちゃんにはおむつかぶれは頻繁に認められます。
1ヶ月検診でおむつかぶれがあって、軟膏を処方されることも
多いでしょう。
おむつかぶれに一般的に処方される軟膏としては、
亜鉛化軟膏とアズノール軟膏が多いと思いますが、
この二つの軟膏の違いは何なのでしょうか?
どう使い分けるのでしょうか?
亜鉛化軟膏もアズノール軟膏も、
外用剤としての基剤で分類すると、
油性基剤に分類され、褥瘡治療などでも
同列で紹介されることが多い薬になります。
結論から言ってしまうと、
この二つの軟膏にはそれほど大きな違いはなく、
混合されて処方される例もあり、
それほど明確な使い分けもないようですが、
少し詳しくそれぞれの薬を見ていきます。
亜鉛化軟膏の薬効薬理
亜鉛化軟膏の添付文書からの抜粋です。
皮膚のたん白質と結合して被膜を形成し、
収れん、消炎、保護並びに緩和な防腐作用を現す。また、浸出液の吸収及び分泌抑制により、
創面又は潰瘍面などを乾燥させる。酸化亜鉛の作用に加え、
皮膚軟化性(軟膏)及び皮膚密着性(軟膏・チンク油)を持ち、
痂皮を軟化し(軟膏)、炎症を消退させ(チンク油)、
肉芽形成・表皮形成を促進させて皮膚疾患を改善する(軟膏・チンク油)
少しわかりづらいので簡単に説明すると、
酸化亜鉛には、患部を保護し、炎症をやわらげる効果があります。
また、患部の浸出液を吸収し乾燥させる働きもします。
これらの作用により、皮膚の再生を助け傷の治りをよくします。
消炎作用はおだやかなので、比較的軽い症状に適します。
ステロイド外用薬のような劇的な効果は期待できませんが、
皮膚保護薬として長期に使っても安心です。
昔からある薬で薬価が安いのも特徴ですね。
アズノール軟膏の薬効薬理
では次にアズノール軟膏の薬効薬理について。
これも添付文書から抜粋します。
1. 抗炎症作用
ジメチルイソプロピルアズレンは、皮下及び腹腔内投与により、
デキストラン浮腫、ヒアルロニダーゼ浮腫、ホルマリン浮腫(ラット)
を、また塗布により、紫外線紅斑(ウサギ)、クロトン油皮膚炎
(ウサギ)、テレビン油皮膚炎(マウス)、熱性炎症(マウス)
を抑制する。2. ヒスタミン遊離抑制作用
各種ヒスタミン遊離物質によるラット組織のヒスタミン遊離を抑制する。
その作用機序は、下垂体―副腎系を介するものでなく、
組織細胞に対する直接的な局所作用であると考えられている)。3. 創傷治癒促進作用
塗布により、機械的皮膚剥離、火傷等の実験的創傷に対し
治癒促進作用を示す(ウサギ)。4. 抗アレルギー作用
腹腔内投与及び塗布により受動性皮膚過敏反応を軽減する(ラット)。
動物実験での効果なので、
腹腔内投与などの効果も挙げられていますが、
実際に使用する塗布による効果を簡単に説明すると、
アズノール軟膏は、植物に由来する非ステロイド性の軟膏です。
患部を保護し、炎症をやわらげる効果があります。
また、皮膚のアレルギーをおさえる働きもします。
これらの作用により、皮膚の再生を助け傷の治りをよくします。
消炎作用はおだやかで、比較的軽い症状に適します。
具体的には、湿疹、ジュクジュクしたびらん、やけどや日焼けなどに用いるほか、
皮膚の保護・保湿薬としても有用です。
ステロイド外用薬のような劇的な効果は期待できませんが、
皮膚保護薬として長期に使っても安心です。
では、亜鉛化軟膏とアズノール軟膏の違いは?使い分けるとしたらどう使い分ける?
冒頭でも書きましたが、
亜鉛化軟膏とアズノール軟膏には大きな違いはありません。
しかしながら、上述した薬効薬理から考えると、
僅かながらも違いはあり、
それを基にした使い分けも考えられなくはありません。
いくつか比較できる点を挙げてみます。
●色が違う
亜鉛化軟膏は白色、アズノール軟膏は青色の
軟膏であり、色が異なります。
しかし、おむつかぶれに使用するのであれば、
外観を気にする必要も無いので、
色の違いは問題にはならないでしょう。
●薬価
どちらもgあたり3円もしない、
非常に安価な薬であり、
差はありません。
●アズノール軟膏にはヒスタミン遊離抑制作用がある
これは亜鉛化軟膏には無い作用ですね。
ここはひとつ違いになります。
ただし、実際にはこのヒスタミン遊離抑制作用までを
考えてアズノール軟膏を処方することは
少ないのではないか?と個人的には思います。
●消炎作用はどちらもおだやか
消炎作用には大差ないと考えて良いでしょう。
ただし、よりびらんの強い所見に対しては、
亜鉛化軟膏ではなくアズノール軟膏を処方する、
というドクターもいるようです。
個人的な意見を言わせてもらえば、
消炎作用に差を求めるなら、
つまり消炎効果を期待するのであれば、
自分であればステイロイド軟膏を処方します。
●アズノール軟膏には冷却作用がある
一部の書籍には、アズノール軟膏の効果として、
冷却作用を記載しています。
これが大人への例えば熱傷や、炎症性病変に使用する
目的で使用するならば、この冷却作用は意味を持つかもしれませんが、
新生児・乳児へのおむつかぶれ、に使用する場合には、
大きな差は生まない作用かもしれません。
やはり、明確に使い分けるほどの違いは、
この2剤には無いように思います。
病院によっては、片方の軟膏しか置いていない、
というところもあるでしょう。
医者個人の使用経験からの好みもあるでしょう。
日常診療上、何気なく、それほど深く考えずに処方していた軟膏でしたので、
ふと「この2剤の違いは何なのか?」と疑問が出たのですが、
結論としては「大差ない」ということで問題ないかと思います。